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プライバシーの侵害につながる? 防犯カメラ設置で注意すべき点と告知について
防犯カメラの設置を事前に周知したり、動作中であることを説明する義務はありません。しかし近年の防犯カメラは性能が上昇しており、鮮明な映像が高解像度で記録できます。意図せずにプライバシー侵害を招くおそれがあり、そのため設置や撮影を快く思わない方もいます。
防犯カメラを設置・運用する人は、個人情報保護法で規定される「個人情報取扱事業者」になるため、法律や配慮について十分に意識しなければなりません。防犯カメラの設置がプライバシー侵害にならないように、設置・運用に配慮すべき点をご紹介します。
「防犯」目的のカメラ設置を告知する義務はなし
個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)
- 第二十一条個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
- 2.個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
- 3.個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表しなければならない。
- 4.前三項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
- 一利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
- 二利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合
- 三国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
- 四取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合
個人情報保護法第21条第4項第4号の規定では「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」、個人情報の収集について告知の義務は無いと定められています。
「防犯」目的のみに利用する場合、告知する義務はありません。ですが多くの店舗や施設では「防犯カメラ作動中」のステッカーを貼って個人情報を取得している旨の告知を行っています。
監視カメラがあると明示することで犯罪行為の抑止につながり、また、プライバシーを守りたい、撮影を快く思わない方にも配慮することができます。
告知義務が生じる場合
防犯目的のカメラ設置に個人情報取得の告知の義務はありませんが、防犯「以外」の目的に映像を利用する場合は原則、告知義務が発生します。告知の義務が発生する例としては
- 映像からわかる個人情報を利用
- 来店者が録画された映像を解析して年齢や性別、その他属性情報をマーケティングに活用する
- 顔認識を利用したサービス提供
- 店舗やオフィスの入口に設置したカメラの映像から顔認識を行って入退室を管理したり、VIP対応を行う
これらの例以外でも防犯以外の利用と捉えられる場合は告知の義務が発生しますので、適切に対応しましょう。
告知には何を記載すればいいのか
- 第十七条個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
- 2.個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
告知には何を掲載するかは法律で細かく規定されてはいません。ですが、第17条では「利用目的をできる限り特定」し、あらかじめ公表しておくか、個人情報を取得する際に本人に通知」すると定められています。
「カメラ画像利活用ガイドブック v3.0別ウインドウで開く」では、カメラ画像の内容及び利活用目的にあわせて
- 運用実施主体の名称及び一元的な連絡先
- カメラ画像の利活用によって生活者に生じるメリット
- カメラの設置位置及び撮影範囲
- カメラ画像から生成または抽出等するデータの概要
- 生成又は抽出等したデータの保存期間
- 生成又は抽出等したデータからの個人特定の可否
- 生成又は抽出等したデータの第三者への提供の有無、及び提供する場合、その提供先
- カメラ画像やカメラ画像から生成又は抽出等するデータの安全管理のために講じた措置
などを記載し、生活者に理解しやすい表現となるように、必要に応じてイラストや多言語化対応をするのが良いとされています。
防犯カメラ設置で注意する点
防犯カメラを店内やエントランスなどに設置する際には以下のような点に注意しましょう。
法的規制の確認
まず、法的規制を確認しましょう。お住まいの自治体が防犯カメラ設置のガイドラインを制定している場合はガイドラインを確認してから。着工・告知に取り組みましょう。
設置場所の選定
カメラの設置場所やアングルを慎重に設定しましょう。公共の場所や他人の住宅への監視は避け、通りすがりの人が映らないように画角を調整するなど、プライバシー侵害にならないように十分な配慮をしましょう。
撮影目的の掲示・告知
カメラが設置されていることを明示的に告知ましょう。これにより、通行人や訪問者に対してプライバシーへの影響を知らせることができます。告知は誰が見てもわかりやすく、認知しやすい場所に設置しましょう。
利用目的を記載したホームページURLや誘導するためのQRコードを掲示したり、防犯カメラ自体に「防犯カメラ作動中」と書いておく方法も良いです。防犯カメラの設置目的が撮影される側に伝わるよう掲示しましょう。
録画データの保管とセキュリティ
録画データは適切に保管し、不正アクセスや流出から守るためのセキュリティ対策を講じましょう。データ保存期間について法的規制がある場合はそれに従い、不必要なデータ保持を行わないようにしましょう。
プライバシーへの配慮
カメラの設置場所を選ぶ際には、隣人や通行人のプライバシーを尊重しましょう。
カメラの視界に他人のプライベートな領域が含まれないように注意して、不必要な映像の収集を避けましょう。カメラにプライバシーマスク機能があれば、活用しましょう。プライバシーマスクとはAIが映像に含まれる個人情報を検知し、自動でモザイク処理する機能です。
定期的なメンテナンス
防犯カメラは定期的なメンテナンスが必要です。カメラが正常に動作しているか、レンズが清潔であるかを確認しましょう。
故障やトラブルが発生した場合、早急に修理または交換しましょう。
最後に
防犯カメラはその存在だけでも犯罪抑止になりますが、利用者や生活者に不快感を与えないために、設置には十分な配慮が必要です。
省庁や自治体が作成しているガイドラインを参考に、適切な設置を行い、撮影していることとその目的を表示するようにしましょう。